自分だけのマスコットキャラクター
「自分だけのマスコットキャラクターが欲しい」
と、ずっと思っていました。
自分の分身のような。。。そのキャラクターを見れば、一目で誰なのかがわかるような。。。
そんな、自分自身の看板的なキャラクターが一つあればいいのになぁ、と。
LINEスタンプの世界は、世界中のクリエイターたちが作る、個性豊かなキャラクターで溢れかえっています。
わたしも、なんとか自分らしいキャラクターを形にしようと、アイデアをイロイロと考えました。
巷では猫がもてはやされているようですが、わたしは動物の中では鳥が一番好きです。
そこで、「小鳥を使った可愛らしいキャラクターを一つモノにしてみよう!」と、決心し、一番初めにこしらえたのが、髷を結ったスズメが着物を着ている「丁髷雀(ちょんまげすずめ)」です。
これは、まったく全っ然売れませんでした(笑)
どうして売れないのかを考えました。
人の意見も参考にし、その結果、どうやら特徴のありすぎる「濃い」キャラクターよりも、なるべくクセのない、誰もがとっつきやすい、「普遍的」なものの方が、好まれるのではないかという結論に達しました。
そして、動きはおなじままで、キャラクターの小鳥をなるべくシンプルに、ただの「小鳥」として描き変えたものが「小さな和鳥スタンプ」です。
「和鳥」というのは、カナリヤやインコなど、外国産の「洋鳥」に対し、日本産の鳥を指す言葉で、「和もの」に凝っているわたしは、どうしても「日本の野鳥」にこだわりました。
このスタンプは、ものすごく、というほどではありませんが売れました。
おなじ動きの「丁髷雀(ちょんまげすずめ)」が、未だに売れてないのですから、キャラクターをシンプル路線に変更した、わたしの読みは当たっていたと言っていいのかもしれません。
しかし、わたしはこの「小さな和鳥」に満足していませんでした。
表現したかった小鳥は、静止画スタンプとして一番最初に描いた「ふっくら小鳥の日常」の小鳥みたいに、もっとこう、羽根の感じがフサフサしていて、丸っこい感じの鳥だったのです。
ペンで描いた線を、アニメーションさせるために「ベクター」化すると、線自体はキレイなのですが、なんとなくツルツルした感じになってしまい、手描きのふわふわ感を出すのには手間がかかります。
そこをあきらめずに、なんとかイメージに近づけようとがんばりました。
そして完成したのが、小鳥キャラクターの第三弾「小さな和鳥の日常スタンプ」です。
リリース後に修正箇所が見つかったので、「リメイク版」となりました。
今朝リリースしたばかりです、どうなるかな?
アニメーションスタンプはベクター画像が作りやすい
わたしはペン画を描くことが好きなので、スタンプを作る際にも、まず、紙に鉛筆で下書きをし、それをトレース台でトレースしながら、漫画用の原稿用紙にGペンとインクでペン入れをし、スキャナーでパソコンに取り込んで作っています。
今の時代、タブレットを使えば、パソコンの中にダイレクトに絵を描くこともできるのですが、試してみたところどうにも使いづらく「わたしには向いてないのかな?」と、早々にあきらめてしまいました。
スキャナーで線画を取り込むと、その線画は「ラスタ形式」(pixelによる画像形式)の画像となります。
しかし、画像をアニメーションさせようとすると、「ラスタ形式」よりも「ベクタ形式」(画像を数値化して表現した形式)の方が、断然動かしやすくてオススメです。
ベクターによる画像は、伸縮自在で、サイズを変えても劣化しない上に、ポインターをつかんで自由に線を動かせるので、アニメーションのために、少しずつ違う絵を用意する際、とても扱いやすいのです。
そんなわけで、わたしがアニメーションスタンプを作る際には、まず、パソコンに取り込んだイラストを「CLIP STUDIO PAINT PRO」で立ち上げた後、「ラスタ形式」から「ベクタ形式」に画像を変換することからはじまります。
手順としては
線を取り出しやすいように、「色調補正」→「明るさ・コントラスト」でコントラストに30くらいの値をいれて、白と黒をハッキリさせる。
↓
「編集」→「輝度を透明度に変換」で、線画の背景を透明化し、線だけを取り出す。
↓
その線を、「レイヤーの変換」で種類を「ラスターレイヤー」から「ベクターレイヤー」に変え、OKを押して変換する、という流れになります。
ただ、ベクターに変換すると、どうしても、多少は線がくずれます。
折り重なったポイントの中から、いらないものを削除し、アンチエイリアスもかけて、ガタガタになってしまった線を、再びなめらかな線になるように整え、きれいな線画に仕上げていく作業が必要です。
一度ベクター化さえしてしまえば、あとは思いのまま。
画像の劣化を気にせずに、作業を進めることができるので、何度もやり直ししながら自分の納得のいく動きをつけていくことができます。
得意なテーマを一つ決める
わたしのLINEスタンプは「和風」を題材にしたものが多いです。
理由はもちろん、日本的なものが好きだということもありますが、手もとに絵を描くための資料がたくさんあるという、現実的な状況があります。
およそ6年に渡る、自サイトでの漫画連載の間、わたしは漫画の世界観を表現するために、江戸時代や日本的なものを扱った本の中から「これだ!」と思うものを見つけては、資料として買い込んでいました。
目的が絵を描くためだったので、参考になる画像をたくさん扱ったムック本が多いのですが、改めてザっと数えたところ、50冊近くはあるようです。
小説などを加えると、もっとたくさんになります。
この、集めたたくさんの資料を利用しない手はないと考えたことと、自分らしいカラーを一つ決めるために、スタンプを作るのなら「和もの」でやってみようと決めました。
人によるのかもしれませんが、なにかを作る際には、自分が得意なテーマを一つ決めておいた方が、それをよすがとして作りやすいように思います。
わたしの場合、和風なものを載せた資料をたくさん持ち、長い間慣れ親しんできたので、和ものを扱うことが得意です。
スタンプを作る際にも、和風なアイデアを浮かべやすく、完成した際のイメージもつかみやすいようです。
しかしながら、もともとは西洋ファンタジーも好きだったので、新しく作りたいスタンプのネタを考えた際、和ものでは収まりきらず、最近は「空間小人」や「シュールな日常スタンプ」など、和にこだわらない作品も作るようになりました。
あまり窮屈にこだわりすぎず、どうしても作りたいものは作った方が楽しいですが、和ものとは世界をわけて考えています。
現在は小鳥のキャラクターものに再チャレンジ中で、これも日本の野鳥です。
自分のキャラクターに動作をつけるのはとても面白い作業です♪
アニメーションスタンプに挑戦
わたしの作ったLINEスタンプは、1作目の「ふっくら小鳥の日常」以外はすべてアニメーションスタンプです。
わたしがLINEスタンプを作り始めた時「スタンプショップ」では、すでにアニメーションスタンプがたくさん販売されていて、そのインパクトに驚いたわたしは「静止画はアニメにかなわないのではないか?」と密かに思っていました(現在は思っていませんが)。
動きのあるスタンプはその分楽しいし、もらった方もきっと嬉しいにちがいない。
しかし、アニメを作るのは、たぶんものすごく大変な作業だろうから、初心者のわたしには、まだまだ無理だろうなあ。。。残念だなあ。。。と、凹んだり、すでに作って売っている人に憧れて、うらやましく思ったりしていました。
しかし、何事もやってみなければ始まりません。
アニメーションスタンプについて考えているうちに、アニメで表現したいスタンプのアイデアが次々と浮かんできました。
幸い、制作のために買った CLIP STUDIO PAINT PRO にはアニメを作れる機能がついていました。
それどころか「新規」の設定画面で「アニメーションスタンプ」というプリセットがちゃんと用意されているほどで、LINEアニメーションスタンプを作るにはもってこいのソフトです。
説明書を何度も読み返すうちに、しだいに「わたしにも、できるようになるかもしれない」と思うようになりました。
そうなってくると、あとは挑戦するのみです。
ノートに作りたいアニメのイメージを描き、動かしたいイラストをPCに取り込んで、説明書とにらめっこしながら何度もやり直し、初めてイラストが動いた時。。。
「これは、面白い!」と、すぐに夢中になりました。
そうして完成したのが、2作目の「和風スタンプ」です。
「和風スタンプ」は、あとから文字を修正して「改訂版」を出したので、初めのものは現在は販売中止となっていますが、イラストはおなじものをそのまま使っています(ショップでの並びも3番目となっています)。
とても難しそうに思えたアニメーションスタンプですが、実際にやってみると、それほど難しくはありませんでした。
ちゃんとしたソフトを使えば、動かすだけなら、誰でもすぐに動かせるようになると思います。
以来、わたしが作ったスタンプは、現在のところすべてアニメーションスタンプです。
アニメの方が表現方法が自由で、作っていて楽しいからですが、他にも理由として、作る数が最大24個で良いこと。
売る時の単価が、静止画よりも高く、売れた時の収入が大きいことなどがあげられます。
はじめは手探り状態
わたしが「LINEスタンプを創ろう!」と思った理由は、続けていた漫画制作をストップさせて、なにか代わりに絵を描くことを使った表現方法を探していたからです。
そしてもちろん、副業としてお金になるから。
はじめは、まったくの手探り状態でした。
なにしろ、スタンプ制作を開始する2017年の春まで、わたしはLINEを使ったことがありませんでした。
もし使っていたら、LINEスタンプに取りかかるのももっと早かったのではないかと思っています。
LINEというのは未知の世界であり、なにがどうなっているのかさっぱりわからなかったので、制作することを決めた後、まずはアマゾンで入門書を買って勉強することから始めました。
ちなみに買ったのは、あわゆき+森嶋良子著の「LINEスタンプ つくり方&売り方手帖 ~LINEクリエイターズマーケットの登録から販売&PRまで」 (玄光社MOOK)です。
この本には最初の頃本当にお世話になりました。
本を参考にしながらLINEアプリをダウンロードし、「LINE Creators Market」に登録するところからスタートしました。
制作のためのソフトも購入し(わたしが「CLIP STUDIO PAINT PRO」を使うようになった理由)、そのソフトも初めてだったので、付属のリファレンスブックで勉強して使い方を覚えました。
そうして、初めて作ったスタンプが「ふっくら小鳥の日常」です。
スタンプといえば「キャラクター」というイメージがあったので、まずはお試しという感じで、好きな小鳥をつかって静止画のスタンプを40個作ってみました。
世界を相手に販売できるということなので、海外の人が使うことも意識して、文字の入っていない、キャラクターのアドリブだけのスタンプです。
数が多いので、イラストのサイズをそろえたり、一つ直すと全部修正しなければならないなど大変でしたが、試行錯誤しながらコツコツ作りため、なんとか完成。
初めて「リクエスト」が「承認」され、「リリース」し、そして売れた時は「本当に売れるんだ!」と興奮しました!うれしかったです。
案ずるより産むがやすし。
あの時から2年経ちますが、なにもわからない手探り状態でも、とにかく行動に移してみてよかった、そう思っています。
LINEスタンプはコミュニケーションツール
LINEスタンプはあくまでコミュニケーションのためのツールです。
そのため、アニメに無限の可能性があるとはいえ、アニメーションになんらかのメッセージをこめる必要があります。
買ってもらうためには、自分の好きなように表現するだけでなく、実用性も考えて、使ってくれる人が使いやすいような作品を作ることが大切です。
LINE CREATORS MAGAZINEに掲載されている「売れるスタンプは何が違う?」には売れるスタンプを創るためのたくさんのヒントが紹介されていて、とても参考になります。
例えばわたしの場合は、日常でよく使われるあいさつや季節感などを意識して取り入れ、「おはよう」「おやすみ」「いってらっしゃい」「おつかれさま」などの言葉を、わかりやすいように文字としてハッキリと入れておくようにしています。
スタンプが売れて使ってもらえると、「LINE Creators Market」の「マイページ」→「統計情報」→「アイテム」より、アイテムごとに、どのスタンプが使われたのかが数字でわかるようになっているのですが、やはり「おはよう」「おやすみ」「よろしくお願いします」などのあいさつ言葉や「おつかれさま」「ありがとう」「おめでとう」など、ポジティブなお礼やお祝いの言葉が多く使われています。
「×」よりも「〇」の方が、送受信とも倍以上も多いです。
わたしはどちらかというと、自分が本当に創りたいものに凝る方なのですが、心地よいコミュニケーションができるように、受け取った人が嬉しくなるようなスタンプを創れたらいいなあと思っています。
4秒間の魔法
LINEのアニメーションスタンプには4秒間の縛りがあります。
この縛りの中で、自分のイメージをどれだけ表現できるか……ここがアニメーションスタンプ制作の面白いところだと思っています。
俳句に十七音の縛りがあるように、表現したいものを4秒間という時間の枠の中にきれいにまとめること。
うまく収まった時には「やった!」という喜びと達成感があり、この瞬間のためにわたしはアニメーションスタンプを創り続けるのかもしれません。
アニメの世界ではどんなことでもできます。
どんなものを登場させてもいいし、登場させたものになにをやらせてもいい。
場所、時間、色も形も無限の可能性の中で、無限の表現ができるのです。
まさに「4秒間の魔法」です。
現実の窮屈さから逃れて、スタンプの世界の中で、わたしの心はのびのびと広がっていきます。
幼い頃から空想が好きだったわたしにとって、自分の創った夢の世界にひたれることは、生きていくためにとても大切なこと。
そのためのツールの一つを与えてくれたLINEスタンプに、わたしはとても感謝しています。